使用音楽機材レビュー

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ROLAND XV-5050 + SRX EXPANSION BOARD

Roland XV-5050 プロ御用達の業務用商用音源。JVシリーズの後型として発表されたXVシリーズですがすっかり定着した感がありますね。現在ウチではEX5と併せて主力機材となっています。

デフォルトで波形容量64MB(16Bitリニア換算)という(当時としては)膨大なメモリを搭載し、更に各コンセプトごとにまとめられた音源ボードを増設することで音色を追加することができ、本機「XV-5050」は最大で192MB、フラッグシップモデルである「XV-5080」では最大384MBという波形容量を持たせることができるPCM音源です。

ちなみにウチの「XV-5050」は既にエキスパンション・ボード(通称エキパン)を「Studio SRX」「Symphonique Strings」「Complete Orchestra」「Ultimate Keys」「Complete Piano」の計5枚、増設済みです。必要に応じて差し替えて使用しています。 XVシリーズとしては本機「XV-5050」の他に、フラッグシップモデルである「XV-5080」、既に生産が終了した「XV-3080」、そしてバリューモデルである「XV-2020」があります。また、XV-3080相当の音源を載せたウェイト鍵盤付きモデル「XV-88」も用意されており、同等の音源でも制作スタイルに合わせた機材環境構築が可能なのも魅力のひとつです。

尚、本機「XV-5050」は従来の「XV-3080」に代わるミッドシップレンジモデルという位置付けになっています。ちなみに余談ですが、DTM音源の代表格である同社「SC」シリーズはXVの前型である「JV」音源の音色、最新の「SD」シリーズは「XV」音源の音色をベースに、廉価版民生用という位置づけで設計されているようです。

さて、この「XV-5050」ですが。音はJVを包括しつつ、さらに良くなっているカンジです(若干中域がもっさりした感もありますが……)。JVでの鬼門だったマルチティンバー時のモタリもかなり改善されています(それでもまだまだモタりますけど(苦笑))。ただし、音全体の傾向としてJVの音色を踏襲してはいるものの、若干毛色の違う感じに仕上がっているので、特別にJV独特の音色を求める場合は、このXVとは別にJVを用意した方が良いと思います。

XVシリーズの中ではこの「XV-5050」はミドルレンジモデルにあたりますが、その性能はなかなかです。パラアウトのS/Nに関しては後型ということもあってか、「XV-5080」よりも良いらしいです(R-bus経由ではかないませんけどね(笑))。また、内蔵プリセット音も「XV-5080」より1バンク分追加されていますし、非常に微妙なところですが音色によっては気持ち音質が上がっているような気がしないでもないですが多分気のせいでしょう(どっちだ)。……っていうのは冗談で、回路の設計を見直して実際音質は改良されているそうです(笑)。

SRX-03 "Studio SRX" 出音に定評があり極端に手の届かない価格帯というわけでもない機材のため、DTMユーザーが2台目の音源として導入を検討されているシーンをよく見かけますが、DTM音源としての観点からみた2台目としては……どうでしょう、使ってやれなくもないですけど、自在にハンドリングして自分の求める音色を出していくにはやはり相応の知識と技術が要求される気もします。一般的なDTM音源に不満を感じてきた方はいきなり安易にXVに飛びつかずに、このXV系の波形を乗せている「SD-80」あたりを検討した方が無難かもしれません。

このXVとSD-80との決定的な違いは「XVは波形からひとつひとつ音を作っていく」、「SD-80はあらかじめ「使える音」に作ってある」というところ。なのでXVを使って制作された楽曲などを聴いて、買ってすぐに高品位な出音でシーケンスを組むことが出来ると思って導入してしまうと失敗するかもしれません。その点SD-80はあらかじめXVの音を「使える音」にエディットしてある状態でプリセットしてあるので、スキルに自信がない方や手軽にプロっぽい音を鳴らすのであればSD-80をオススメします。逆に相応のスキルを持っているのであれば使い方によってはSD-80では不満噴出と思われるので(笑)、このXVにした方がいいでしょう。やはり自由にシンセサイズできる点や、クオリティーの高い音色を複数増設できるというのは大きな武器になります。

なぜこんなことを書くのかというと、機材単品での作品完結(特にゲーム音楽などの打ち込みなどでの用途)を考えている場合、オールインワンDTM音源的な感覚でこの機材を導入してしまうとXV(JV)ははっきり言って不便だからです。

どういうことかというと、まず「音色に偏りがある」ということ。オールインワンDTM機材のようにそれなりの音が一通り揃っているのではなく、それぞれの音色が特化しているような感じです(=欲しい音が入っていない可能性があります)。必要な音色が入っていない場合エキパンを別途準備するなど追加投資も必要になってきますし、その肝心なエキパンにさえ欲しい音がない可能性もあります。

そしてPCMとはいえ「あくまでシンセである」ということです(PCMはシンセなのかという議論はありますけどね)。複数の機材を駆使して制作することを前提としたり、あくまで基本は自分で波形を加工してから利用するという機材の性質上、すべての音が素の音でDTM音源のように手軽に使えると思って買ってしまうとがっかりする可能性が大ということです。オールインワン的な使い方は厳しいわけですな。

以上のこういった問題から、機材単体で作品を完結させるつもりのユーザーは導入時に熟考する必要があると思います。

SRX-04 "Symphonique Strings" ちなみこのXVシリーズ、一応GM2にも対応はしていますが、こちらは本当におまけといった感じなので通常では殆ど使えません(笑)。GM2音源として使える音色は全音色中GMモードとして別途用意されている256音色+ドラム9ドラムセットのみ(GMモードでは他の内蔵音色は使えません)。当然、他の内蔵音色のように波形を根本からエディットすることはできませんし、互換性をヘタに重視しているため音質もそれなりです。一応隠しモードでGSのエクスクルーシブを受けるとGSモードに切り替わる機能もついてはいますが、はっきり言って音色の互換性は皆無に等しいので、最近のSCやSDのMIDIを再生しても時間の無駄です(爆)。まぁ単純にGMデータを作る分には問題はないのですが、しかしそういった用途を主に考えているのであればこの機材をわざわざ選択する必要はないでしょう。

……ってちょっと毒を吐いてしまいましたが(笑)。で、このXV。一言で言うと使えます。使えます……が、劇的に音質が良いかと言うと実はそうでもないです。というのも拡張エキパンを増設してナンボ、という感じですので、内蔵音色はそれなりという感じですね(っといってもそこいらのDTM音源よりははるかに素材はいいですけど)。

音色はよく言うとそこそこの高音質でオケに混ぜやすい、悪く言うとややのっぺりしたRolandっぽい音、こんなカンジでしょうか。でもむしろそういったソツのない音をミキサーに落とし込む使い方が一般的ですから、そう言う意味ではこういった音色が正解でしょう。デフォルトの音は一言でいうと「バランスがよい」。商用として使う条件として、「欲しい音がすぐに手に入る」という事と、「音色を加工することで要求する音にできる」こと、この2つが挙げられると思いますが、この機材はどちらに利用するにもバランスがよいように感じます。

音色に関しては上にも書きましたとおり、基本的にこの機材はエキパン(SR-JV、SRX)を増設して使うわけですが、最新型エキパンSRXシリーズ、こちらはかなりいい線までいってます。XV内蔵の音源とエキパンを同時に使うとエキパンの音が良すぎて浮いて聴こえてしまうことがあるほどです(笑)。もっとも、ギガサンプラーなどに代表されるいわゆるサンプラークオリティーには及ばないのですが、ロード時間ナシでこの音質を手に入れられるのは大きなアドバンテージ、魅力と言えるでしょう。

尚このエキパンには種類があり、JVやXPシリーズに代表されるRolandの旧機種に搭載可能な「SR-JV」というものと、それ以降の新しい機種に搭載できる「SRX」というものがあります。「XV-5080」では、SRXに加え、SR-JVも挿すことができますが、それ以下の機種ではSRXのみとなります。更にSRXの中でも06~09に関してはSR-JVの波形・パッチを再構成したものになっており、ここら辺は音質という観点から考える場合、導入時に注意が必要です。

SRX-06 "Complete Orchestra" 私は現在計12枚リリースされているSRXのうち、5枚を導入していますが、まずは「SRX-03 ”Studio SRX"」。こちらは純正SRXですが、スタジオ系の楽器をフューチャーしているだけあって、ギター、ドラム、エレピ・シンセ系がかなり充実しています。なかでも特筆するべきはドラムキット。これはかなりのレベルの音がします。スタジオで録った生ドラムの雰囲気がしっかりと出ています。特にベロシティごとの打ち分けは圧巻。ただし、これは「Studio SRX」全体に言えますが、プリセットのパッチはかなり素の波形の状態となっているので、そのままでは使いづらいところもあります。しかしこれはエディットしてやることでいくらでも音色の性格を変えられるので、欠点というよりむしろこれで正解でしょう。

次に「SRX-04 "Symphonique Strings"」、こちらも純正SRXでストリングス専用音源です。こちらはソロ弦ではなく複数の弦をシミュレートした、いわゆるストリングスのみに的を絞った音源で、その音質はそこらの安価なモジュールを遥かに凌ぎます。音やせがなく、重厚感がある非常に生々しい音を奏でてくれるので、オケ物を本格的にやるなら必須のボードといえるでしょう。初めて触れても、例えばトレモロをシミュレートした音などを聴けばDTM音源との差を明らかに感じることができます。ただしこのエキパン、巷でも聞かれますが、他のどのボードよりも最も扱いが難しく、使いこなすには相応の技術が求められるボードだったりします。弦楽器というものがそもそもDTMでシミュレートするのが難しいのですが、それを高品質で表現するとなると……少しでもDTMをかじったことがある方ならその難易度はお分かりいただけるかと思います。しかしうまく扱いさえすれば、次に書く「SRX-06 ”Complete Orchestra”」と組み合わせることで充実したフェイクオーケストラを奏でることができます。なお余談ですがこのボード、ストリングスという音色の宿命上、発音数を馬鹿食いするので、マルチティンバーで使うのは難しいことを付け加えておきます。音もモタりやすくレイヤーも多いため、パラでDAWに録るなり発音数の多い上位機種「XV-5080」を用意するなりしないと多量に使った音色は組めません。

続いてRolandが「オケの完全版」と銘打つオーケストラ専用ボード、「SRX-06 ”Complete Orchestra”」。しかしその正体はひとしきり出回った音です(笑)。まぁそんなことは分かりきって購入したんで別に構わないんですけどね(苦笑)。音はやはり「Studio SRX」などとは違い、過去のSR-JV波形を再構成したということもあって努力は認めますがRoland特有の中域がこもった、今となってはサンプリングの甘い音がします(苦笑)。しかし一応オーケストラ楽器がJV音質で一通り揃っているという意味では使いではあります。

そして「SRX-07 ”Ultimate Keys”」。ピアノ・エレピ・オルガンなど鍵盤音色からブラス・パッド・ギター・ベース音色などバンド系の音色まで、演奏家や打ち込みをするユーザーとしては一通り揃えておきたい音色を網羅している、非常にC/Pの高いボードです。既に所有しているスタジオ系音色SRX-03と連携するとかなり強まった音作りができます。波形容量がものをいう音色がSRX-06ほど多くないため、SR-JVの再構成パッチであるにも関わらず十分及第点な音質で鳴ってくれるところもポイントが高いです。

SRX-07 "Ultimate Keys" 個人的にはこのボードが発表された当初はあまりピンとこなかったんですが、時間を置くにつれ導入のメリットを痛感するようになり、今では私の楽曲制作時に大きなウェイト締める音源になりました(笑)。今や一番使うエキパンかも(笑)。SR-JV時代から定評のあるステレオサンプリングされたピアノや、SC-88Pro以降すっかりお馴染みとなったよく馴染むフルートなど定番音色も用意されており、とりあえず音ネタを増やしたい方や、1枚目の導入を検討されている方にもオススメできる音源だと思います。ちなみに強いて弱点を挙げるとすれば……やはり「どれもどこかで聞いたことのある音」であること(笑)。これは仕方の無いことではありますけどね。考え方によってはそれだけ多くのユーザーが使ってきた、実績のある音色であるとも言えますし。

最後に「SRX-11 "Complete Piano"」。Rolandのデジタルピアノとして最高峰の音質を誇る「RD-700SX」のウェーブをそのまま移植した、一点特化型の純正SRXピアノ専用音源です。オフィシャルページの紹介でも書かれていますが、同じピアノボードでも「SRX-02 ”Concert Piano”」とは違い、ブリリアンスが高めで、張りのある出音が特徴となっています。音質は言うまでもありませんが、このピアノのもうひとつの特徴は全鍵フルサンプリングで収録されているということ。最近ではシンセも全鍵サンプリングが当たり前になりつつありますが、JV,XVなどの部分サンプリングPCM世代のピアノを使っている人にとって、音域ごとの継ぎ目が存在しないこのピアノは泣けます(笑)。

ちなみにこのSRXエキパン、定価で一枚3万円程度します(SR-JVエキパンは定価が25000円)。この価格を高いと取るか安いと取るかはユーザー次第でしょう。

シンセサイズに関してはやはりPCM音源なので限界はありますが、それでもPCMシンセとして必要なパラメータは一通り揃っているので、システムを理解すればかなりのところまで音作りを楽しめます。

あとエフェクトについてですが。個人的にはちょっと効きが弱い印象です。特にSRV(SRV-3030)系のリバーブやエフェクト、これがなかなか高品位な感じなんで、これを使うともうGMやプリセットのエフェクトには戻れなくなるんですけど、ただちょっとお上品すぎな感じがしないでもないです。またRolandのエフェクトと言えば、「COSM」が有名ですが、これは物理構造を仮想的にシミュレートするモデリングエフェクトですが、使いでがすごくあるという程ではないですが、弄っている分には面白い効果が得られて楽しいです。

あとこのXV-5050に関して言えば、液晶画面が小さいですよね。私も導入当初は操作面で心配していましたが、さすがにそこはRolandもわかっているらしく(笑)、扱いは思ったほど大変ではなかったです。XV-5080/3080やJVシリーズを触ったことがある人なら割とすぐに階層構造など把握できると思います。

SRX-11 "Complete Piano" それでもやはり画面が小さいといってしまえばそれまでですが(笑)、これは付属のPC用エディター、その名も「XVエディター(まんまやん(笑))」が付いてくるのでそれでカバーできると思います。……と言いたいのですが、このエディター。……処理が重いっ!呆れんばかりの重さです。そして遅い!昨今の世の中の流れの速さに異議を唱えたいのか、動作が緩慢すぎます(苦笑)。USB経由でこの転送速度はいただけない……。ファーム改善を求めたいところです。

最後にこのXVシリーズ。というかXVに限りませんが、こういった商用を目的とした音源やシンセは通常のDTM音源と異なり、連動するようなシーケンサー(XV用のシーケンサー)など、正式対応・推奨されるようなソフトは存在しないため、環境構築もいきなりDTM単品制作の畑からでてきたユーザーには厳しい場合があるのも注意したほうがよいでしょう。また、本体側で波形・パラメータを弄るという概念もでてくるため、PCのシーケンス上からエクスクルーシブでなんとかしようという考えをお持ちの方にもあまりおすすめできないかもしれません。……まぁここらへんはシンセに関してはすべてそうなんですが。つまりは、オールインワンDTM音源と同じ感覚で手を出すと大変ですが、そこら辺をしっかり理解して導入すればDTM音源では手に入らないクオリティーを得ることができる、ということです(笑)。

とまぁ、色々と書いてきましたけども。ウチはEXで処理しきれなかった分を分散する意味合いも込めて導入しましたが、お互いにいい感じに補完しあっている感じで使い勝手は良好です。しっかりと自分のスキルを見極め、お金に余裕があったら一台持っておくと便利な音源であることは間違いありません。

【XV-5050お気に入りの音色】

  • String Ens(ストリングス)
  • Stacc Heaven(ベル)
  • Grand XV(ピアノ)
  • Thick Steel(アコギ)

【SRX-03お気に入りの音色】

  • Taxi Rhodes(エレピ)
  • Piano Duel(ピアノ)
  • St.ChldChoir(コーラス)
  • Studio 1 KIT(ドラム)

【SRX-04お気に入りの音色】

  • Warm Section(ストリングス)
  • Full Tremolo(ストリングス)
  • GrandVln&Vcs(ストリングス)

【SRX-06お気に入りの音色】

  • NaturalVlnsS(ストリングス)
  • 2 Close Oboe(オーボエ)
  • Double Flute(フルート)
  • Choir(コーラス)

【SRX-07お気に入りの音色】

  • Stereo Piano(ピアノ)
  • Spanish Gtr(アコギ)
  • Solo Flute(フルート)
  • StrawberTRON(フルート)

【SRX-11お気に入りの音色】

  • ClassicGrand(ピアノ)
  • Superior Grd(ピアノ)
  • Grand P1(ピアノ)
  • AntiqueUprit(ピアノ)