今日はシンセの鍵盤について。
おバカな記事の次は、マジメな情報でも。
ピアノをやってきた人がシンセの鍵盤で演奏しようとすると、鍵盤が軽すぎて弾きに
くい、という話はよく聞きます。また逆も然りで、シンセやオルガンといったプラス
チック鍵盤に親しんでいる人はピアノは重すぎて演奏できない、という話もこれまた
よく聞きますね。
幸いにもまひまひの場合ピアノもオルガンも触ってきたので、どちらも鍵盤楽器とし
て、でも違う楽器として違和感なく触ることができるんですけど、多くの人はそうで
はないみたいです。ピアノならピアノ一筋、といった感じでやってきて、ある日シン
セを触らなければならなくなったときに突然違和感として悩むようです。
というわけで、今回は鍵盤のお話。それもシンセの鍵盤について少し書いてみようか
と思います。後述の理由で、主にYAMAHAのシンセ鍵盤の話になってしまいますが。
シンセの鍵盤はピアノの木製のものと違い、重さのないプラスティックの鍵盤である
ことが主流です。これはピアノ的演奏のほかにパフォーマンスをする上でウェイトの
ある鍵盤がむしろ邪魔になってしまうケースが多いため。演奏ではなく、鍵盤をスイ
ッチとして使うという考え方をすれば納得できると思います。
平たく言えばピアノ鍵盤の重さでドラムキットを早打ちは難しいですよね、っていう
話です。
さて、そのシンセ鍵盤ですが、同じように見えても実はメーカーや発売時期、機材の
種類で微妙にタッチ感が異なります。古いものより新しいもの、安いものより高いも
のの方がタッチも良くなる傾向はどの世界でも一緒ですが、その中でも群を抜いて品
質が高いとされるのがYAMAHAのシンセ鍵盤です。
ヤマハの代表的なシンセ鍵盤の種類はこんな感じです。
・LC鍵盤
FS鍵盤が出るまでこれが主流。バネ式で安価に製造できるため、現在もローエンドの
シンセに数多く搭載。LCは「Low-Cost」の頭文字をとったもの。LC鍵盤とは呼ばな
いものの、他社のローエンド鍵盤もだいたい似たり寄ったりの構造。だがペラッペラ
なタッチ感のため、演奏には絶望的に不向き。ただし安価に製造できるためDTM用ミ
ニキーボードなどに最適で、ユーザーとしてはコスト的に一概に悪とは言えない存在。
イニシャルタッチのみが主流。
・FS鍵盤
1983年に初めて商品に搭載されて以来、現在に至るまでフラッグシップタッチ鍵盤
の座に君臨し続ける名機中の名機。FS鍵盤は「Fukuyama System」からきてきると
いう話を聞いたことがあります。最初に搭載されたのはDX7だったかな。演奏に主眼
をおいた鍵盤で、圧倒的な演奏のしやすさ、ニュアンスの表現のしやすさで、他社の
鍵盤はこの品質に追いつけず、事実上YAMAHAの独壇場。鍵盤のYAMAHAと言われる
所以。故に熱心な固定ファンが多い。LC鍵盤に比べて構造が複雑なため、コストが例
外なくかかり価格が高くなるのが難点。イニシャルタッチに加え、アフタータッチを
搭載。まひまひもこいつが無いと生きていけません(笑)。
・FSV鍵盤
基本的な演奏感はFS鍵盤と同じで上位機種。FSのイニシャルタッチ、アフタータッチ
に加え、左右の揺れを検知できる「ホリゾンタル・タッチ」を搭載。鍵盤を横に揺ら
すことでビブラートとかVL音源とかピッチを操れるので、ニュアンスを伝える生演奏
に最適。現在はエレクトーンに実装されるのみ。
・FSX鍵盤
「MOTIF XS」で初搭載となったFS鍵盤の改良版。25年に渡りフラッグシップだった
FS鍵盤に変わり、今後はこいつが主流……になるのか?より繊細なタッチに対応す
べく、タッチ感が結構変わりました。また、FS鍵盤では構造上どうしてもカタカタ
といった打鍵音がありましたが、それが鳴らなくなっています。
……どうすか?勉強になるでしょ?(笑)
プレイヤーを標榜するのに鍵盤の種類を気にしない人は、私は演奏に無頓着です、と
自分で宣言しているようなもの。自分にもっとも合った鍵盤を探すべきです。
というわけで、私としてはどうしてもYAMAHAの鍵盤以外の選択肢がないので、マス
ターで演奏用に使うシンセ選びは結構苦労します。他のメーカーも追随してくれれば
いいのだけど。EX5を選ぶときもRoland「XP-80」、KORG「Triton」が候補に挙が
ったものの、鍵盤のあまりのヘタれさにあっけなく脱落しました。
EXの鍵盤がいちばん好み……EXを選んだ一番の理由が実はこの鍵盤だったりします。
76鍵でFS鍵盤搭載、なおかつFS鍵盤のなかでもこのタッチ感を持った機種……EXが
一番だったんですね。デザインや、音質、I/O周り、使いやすさなど、購入時のリサ
ーチではすべて高得点ということも大きかったのですが(もっとも、購入後に有名な
モタりやシーケンサー周りのバグなどに悩まされることになったわけですが:苦笑)、
やはり決め手は鍵盤でした。今振り返れば、当時は自分が一番プレイヤーを志向して
いた時期でしたし、パフォーマンスに直結する鍵盤を最重要視したこの選択は当然だ
ったのかもしれません。
HS……よりELとそれ以降の機種かな、エレクトーンのFSに一番近いタッチ感がする
んですよ。長い付き合いなので、このタッチが一番しっくりきます。HS-5のLC鍵盤で
練習し、演奏発表会のFS鍵盤HS-8で驚愕し、EL90のリファインFS鍵盤にむせび泣い
たのも今や良い思い出です(爆)。
MOTIFやESもFS鍵盤なんですが、中の構造や重りについてやはり少しずつリファイン
をかけているようで、同じFS鍵盤だけど微妙にタッチが違う。FS鍵盤には違いないん
ですよ。でもEXのより軽くなったような……そうそう、以前「CS6x」というシンセが
EXのあとに出ましたけど、あの鍵盤タッチが一番近いかな。MOTIFやMOTIF ESはそん
なタッチ感なのです。ここら辺個人差はあると思いますけど。
ただそれもこのXSのFSX鍵盤のための布石だったのかと。FS特有の、あの独特の押下
音がしないのは、FS鍵盤使用歴が長ければ長いほど慣れが必要な感じですけど、慣れ
ればこれはこれでよさそうです。
んで、今回初採用されたFSX鍵盤。
触った感じでは、FSと比べて抵抗感が少なくなっている分、指にすっと吸い付いてく
る感じです。FS鍵盤は一度押し込むとストンと加速して落ち込む感じですが、FSX鍵
盤は加速感はFS鍵盤ほどなく、弱いタッチへの反応にすぐれている鍵盤といえると思
います。また、押下した鍵盤の戻り方もリニアになっていて、早いフレーズを弾いて
も鍵盤が追随してくれます。
打鍵音がしなくなったこと、戻り方がリニアになったこと。これが一番の特徴といえ
ると思います。ここの改良は結構大きいので、FSがあまりに完成度が高いので気付き
にくい問題点でしたが、いざこういう形でFSXという製品を触らせられると、なるほ
どと唸ってしまいますね。さすがといえるでしょう。
個人的にはFSの重さというのもすごく弾いていて気持ちがいいので……どうなんで
しょうね。FSもFSXもどちらも一長一短があって、今後買うときはものすごく悩み
そうです(笑)。
というわけで、楽器屋さんでシンセを買うとき。演奏を少しでも考えているのであれば、
ぜひ鍵盤のタッチ感もじっくり吟味されることをお勧めいたします。