【楽器楽語事典】金管楽器・ブラス音色(Brass)

Trumpet トランペット

(valve)trumpet〔英〕/Ventiltrompete〔独〕/trompette〔仏〕/tromba(ventile)〔伊〕

057
Trumpet
トランペット。金管楽器を代表する、輝かしい音色を発する高音楽器。
060
Muted Trumpet
トランペットに「ミュート」と呼ばれる消音(弱音)機を取り付けた音色を模したもの。

オーケストラをはじめとして、吹奏楽、ジャズ、軽音楽に至るまで幅広いジャンルで用いられる非常にポピュラーな楽器である。変ロ調、ハ調のほかにも、用途に応じてニ調、変ホ調、へ調、ト調などがあり、更にピッコロ・トランペット、バス・トランペット、コルネット(コノーピアン)など非常に多くの種類の楽器が存在するのもトランペットの特徴のひとつである。その音色は硬く透徹力に富み、全オーケストラの強奏と互角に張り合うことも可能である。故にDTMにおいてはトランペットのボリュームをその他の音色と同じ感覚で上げてしまうことは、その金属的で硬い音色が災いしヒステリックに聴こえがちなので注意が必要である。また、トランペットに限らず金管系の音色は奏法をシミュレートするのを含めてそのエディットが難しい。吹奏楽やジャズなどでよく使われる柔らかめで音程が比較的安定している系統の音色なら多少のシミュレーションも可能だが、管弦楽で使われるようなオーケストラ・トランペットは音質は華麗であるが音程が不安定であるため、シミュレートしていくにはことさら技術を要する。そこで最近では楽器の構造を物理的にシミュレートし発音する「バーチャルモデリング音源」もあるので併用してシミュレートするのが金管楽器らしい音色を目標とするのであれば効果的だろう(もっとも、このバーチャルモデリング音源もコントロールには相応な技術と知識を要求されるが)。こういったものがない場合、音源にあらかじめ用意されている音色からイメージに近いものを選び、アタックやビブラート、ブリリアンスやカット・オフ、レゾナンスなどを調整して対応していくしかないだろう。

Trombone トロンボーン

trombone〔英・仏・伊〕/Posaune〔独〕

058
Trombone
トロンボーン。管をスライドすることで音色を変化させることが出来る金管楽器のひとつ。

オーケストラに限らずトランペットと並んで様々なジャンルで使われる金管楽器のひとつ。特にトロンボーンはポルタメントやグリッサンドといった独特な奏法・音色を持つことで独自の地位を確保したと言えよう。音色的にはトランペットよりやや暗めであり、柔らかくて均一化した音色は和声楽器としてもバランスが取れている。また、強奏時の壮麗で超人的な音量の響はオーケストラ全楽器と比肩するほどであり、オーケストラでの役割は決して小さいものではない。音色的な特徴から、内向的、表情的なソロ演奏にはあまり向いておらず、むしろ野性的で威厳ある表現に適している。オーケストラでよく用いられる用例のひとつとして挙げるならば、テューバと3本のトロンボーンの組み合わせは伝統的であり、和声も良く響き厳粛な雰囲気をかもし出すのにしばしば用いられる。トロンボーンは伝統的に宗教音楽との関わりが深いのも特徴のひとつで、そういったことからオーケストラの中でも宗教的、神秘的な楽器として扱われることがある。DTMとしては音色を加工することによりトランペットのバリエーションとして代用されることもしばしばであり、こういった用例は実際にオーケストラでも意図して用いられることもあることからも、音色の差し替えを理論的にも肯定できる稀な例であり、有用な楽器であると言えるだろう。

Tuba テューバ

tuba〔英・仏・伊〕/Tuba〔独〕

059
Tuba
テューバ(またはチューバ)。金管楽器では低域を担当し、重厚でふくよかな音色を持つ。

古代ローマ時代の円錐状の直管トランペットの名称で、トゥーバとラテン語読みをする。音量が豊富な金管楽器全体の最低音部としての位置を占める楽器で、オーケストラでは特にトロンボーンと組み合わせて用いられる。音はきわめて幅広く重厚で、オーケストラのトゥッティに厚みを加えるだけでなく、広々とした表情的な音旋律やドラマティックな強奏にも適している。また、意外なほど運動能力は高く、用例は限られるが速いパッセージや跳躍などにも用い得る。また、吹奏楽(ブラス・バンド)などでのこの楽器の役割は特に重要で、マーチングなどの快活な曲調のものを含め、オルタネイティング奏法と呼ばれる音階の弾き分けはブラスバンドたる所以を持たせると言っても過言でないほど重要な役割を担っている。故にDTMにおいてはこういった曲調のものを制作する場合、チューバの特性を十分に理解し、パッセージ、音の強弱に一層の注意を払うことにより、よりリアルなシミュレーションを可能とすることができ、全体の質感を向上させることができるので、意欲的に取り組むと良いだろう。

French Horn フレンチホルン

French horn (horn)〔英〕/Horn〔独〕cor〔仏〕/corno〔伊〕

061
French Horn
いわゆるホルン。柔らかくも輝きを持つ豊かな音量を持つ音色で主に金管の中域を担当する。

無弁(自然)ホルン、及びバルブ式ホルンのこと。この種のホルンはフランスからイギリスに入ったのでこの名がある。ホルンはこんにち使用されている管楽器のうち、フルートとともにもっとも古い楽器のひとつで、狩猟用ラッパのうち、肩にかけられるように大きく円環状に巻かれたものが今日のホルンの原型であり、「動物の角、角笛」からできた言葉である。ここでのフレンチホルンは、いわゆるごく一般の「ホルン」と呼ばれるものと広義で構造上差異がないため、以下ここでは「ホルン」としての解説を扱いたい。ホルンとは正式には「valve horn〔英〕」「Ventilhorn〔独〕」「cor a pistons〔仏〕」「corno ventile〔伊〕」と呼ばれ、真ちゅう製の金管楽器で、管は大きな朝顔(ベル)があるのが特徴。管の長さは伸ばすと約3m~4mにもなり、途中には長さの異なる管のついたバルブが3つついている。このバルブ装置発明(1815年頃)以前は、自然倍音しか奏することのできなかったホルン(無弁ホルン)に、半音階を可能とした。このバルブ様式にはピストン式とロータリー式のものがあり、いずれもトロンボーンのバルブと原理は同じである。尚、ホルンに限らず、現在の管楽器ではほとんどがロータリー式のものが採用されている。ホルンは右手の指をそろえて軽く曲げ朝顔(ベル)の中に差し込んで、その加減によって音色や音程を調整するという独特な奏法により、他の金管楽器とは異なった柔らかな丸みを帯びた響きが得られる。そのため、木管楽器との合奏に用いられることもしばしばある。また、強奏の場合には鋭い金属的な響きを、弱奏の場合にはミュートをかけたような音をも作り出すことが出来る。金管楽器でありながら弦の音色とよく溶け合うため、和音の充実や音力の強調に非常に有用である。その柔和な音色と適度な輝きは合奏の色彩感を豊かにする。DTMではその表情豊かに変わる音色を一音では補完しにくいため、弱奏用からフォルティシモの破裂音が収録されているものを含め、複数の音色を持っていることが多い。十分な音色群が揃っているのであれば、場面場面において音色を差し替えて使用するのが効果的な音色ともいえるだろう。また、リアルにホルンの響きを追求する場合、その楽器の特性に注意すべきだろう。ホルンはその構造上、音が鳴る方向(ベル)が客席に対して逆向き(舞台側)であるため、ホールの反射音を多く含み、他の楽器よりやや遠く聴こえる。更に、他の金管楽器と比較した場合その運動能力は決して高くないので、極端にパッセージの早い楽句をホルンに演奏させるのは現実的ではない。これらを鑑みながら楽曲制作を行うことより効果的である。尚、はじめに記した「フレンチホルン」は、バルブ・ホルンだけでなく、無弁ホルンを特に指す場合に意図して使われることがあるので使い分けとして憶えておくと良いだろう。

Brass ブラス

brass〔英〕

062
Brass Section
金管楽器全体で奏した音色をシミュレートした音色。
063
Synth Brass 1
シンセサイザーでブラス音色風に加工・作り出された音色。
064
Synth Brass 2
GM〔063〕のバリエーション。GM〔063〕より柔らかめな音色が配される事が多い。

ブラスとは「brass instrument」の略称で「金管楽器群」の総称を指す言葉であり、ブラスと言う楽器があるわけではない。この名称「ブラス(brass)」は黄銅(真鍮)の英名に由来しており、その名の通り金管楽器の材質として広く用いられている。DTMにおいてはブラスセクション(主にトランペット・トロンボーン・ホルン・テューバなど)での全体吹奏をシミュレートした音色のことを指す。よってこの音色には単楽器での音色と言うよりは編成の大きい、単楽器だけでは出せないような音色をもったものが配される。ストリングスと同様、オーケストレーションにおいて楽器を人数分配するというのはDTMにおいては困難なため、これらの楽器は大変有用で意義のある音色として用いられる。また、オーケストラに限らず、ポップな楽曲でもブラスセクションが担う役割は大きく、楽曲に煌びやかな花を持たせることができるので、楽曲の性質を見極めて利用することは楽曲の品位を高めるのに一役買ってくれることは間違いないだろう。ただし、金管楽器全体にいえることだが、音色が華々しいということは目立つ音であるということなので、音量バランスには注意が必要である。この音色もピアノやストリングスなどと同様に、厳格な音色定義がなされていないため、音源によってその色合いが大きく異なる。そのため、必要に応じて複数の音源より音色をチョイスするという方法も効果的である。また、それ故に極端にその音源音色に依存するような音作りは極力避けたほうが無難だろう。