【楽器楽語事典】木管楽器・シングルリード(Woodwind Single Read)

Saxophone サクソフォン

saxophone〔仏・英〕/Saxophon〔独〕/saxofono〔伊〕

065
Soprano Sax
ソプラノサックス。高域を担当し、柔らかく艶やかな音色が印象の木管楽器。
066
Alto Sax
アルトサックス。テナーサックスと共にポピュラーな楽器。豊かで多彩な表現が可能。
067
Tenor Sax
テナーサックス。中域から低域の音をカバーし、独奏楽器としても頻繁に用いられる。
068
Baritone Sax
バリトンサックス。低域を担当し、独特な割れたような音を出せる、大型の楽器。

サクソフォンはサキソフォンとも呼ばれるが、通常はいわゆるサックスと略称されるのが一般的である。サックスは1840~41年にアドルフ・サックスが考案した、シングル・リードの円錐管の管楽器。かなり太い金属製の管に、クラリネットによく似たマウスピースが取り付けられている。バイオリンなどと同様に、ソプラノからバリトンまで音域ごとに楽器の大きさや形状が異なる。管はE♭管やB♭管などがあり、メーカーにより音域は多少異なるが、同じサックスでも各楽器によって音域はもちろんのこと、得られる音色が大きく異なるのも特徴である。サックスは金属製の楽器であるが、木管と金管を合わせたような独特の音色を持ち、リードを用いて奏するため、同じく金属製のフルートと同様に木管楽器群に位置する。またリードは竹でできており、あらかじめ奏者の好みや求める音色によって材質や固さを選んで使用する。リードの振動する先頭部は非常に薄く割れやすいため取り扱いには注意を要し、故にリードは消耗品でもある。リードを固く振動部を厚いものとすれば豊かな音量でサックスらしい濃厚な音色となり、柔らかく振動部を薄くすれば華麗で煌びやかな音色を得ることができ、また奏するのが容易になる。またリードの微妙な固さ、厚さは紙ヤスリを用いて調整することが可能である。これらはこのサックスをはじめとするリードを用いた管楽器を特徴付けていて面白い。リード楽器の発音原理は基本的には笹笛・草笛のそれと同じで、口からの空気によってリードを振動し、発音させる。サックスは管楽器の中では比較的扱いやすく、奏法も難易度が低めなので初心者に向いているが、様々な奏法・技法が存在するのもまた事実で、特にソロとして用いられる高いレベルの域になってくると一筋縄ではいかない奥深さも併せ持っている。サックスの音色は木管、金管のいずれにも属さない独特なものである。幅と艶のある柔らかで甘い音や、いわゆる「汚い音」も出すことができ、これがサックスのもうひとつの特徴だとも言えよう。DTMにおいてはサックスの奏法を意識した音色選びとピッチベンドなどを用いたしゃくり上げを追求するとより効果的でリアルに伝わる。尚、サックスはその汎用性の高さから、ソロ演奏やジャズ、軽音楽に吹奏楽など幅広く用いられるが、管弦楽、いわゆるオーケストラにて常用されることはほとんどないので、他の楽器との混同に注意が必要だろう。

Clarinet クラリネット

clarinetto〔伊〕/clarinet〔英〕/Klarinette〔独〕/clarinette〔仏〕

072
Clarinet
クラリネット。幅広い音域を持ち、柔らかくふくよかな音色を持つ木管楽器。

クラリネットはシングルリード、円筒管の管楽器で、大小様々な種類がある。その中で最も一般的に用いられるのがB♭管だが、クラシックではA管もよく用いられる。この他オーケストラや吹奏楽の中でB♭管の高音や低音の補強、音色に幅を持たせる、より豊かなハーモニーを生むなどの目的で用いられるハーモニークラリネットと呼ばれるものもあり、E♭管や、最近はほとんど使われることはなくなったがC管と呼ばれるものがこれに相当する。クラリネットは閉管式の音振動をおこす唯一の楽器であり、音色、運指、音域などに他にはみられない特徴を持っている。またこのクラリネットにもソプラノ・アルト・バスといった、担当する音域ごとにそれぞれ楽器が存在するが、4オクターブにも及ぶ広い音域をもち、音域による音色の変化は別の楽器を思わせるほど大きく、またそれぞれに魅力を備えている。まず、最低音域は祖先の名をとって「シャリュモー」と呼ばれ、音色音量とも太く豊かな、他の楽器では得られない凄みのある独特な響を持っている。その上の音域、「ブリッジ」では音が薄くなり、もっとも音勢に乏しくなるが、最高音域は非常に鋭く刺激のある響を持つことが特徴である。そして高音域、「クラリオン(クラリーノとも呼ぶ)」は、晴れやかで光彩豊かな輝かしい音を発し、あたたかい音色になる。クラリネット全体を通して言えるのは、音色の強弱の変化に富み、運動性が優れているということであり、クラシックからジャズ、ソロ演奏に至るまで幅広く用いられていることからも非常に優れた楽器であるといえよう。DTMにおいての使用法だが、音色については前述の通り音域ごと、奏法ごとに大きく変化するため、比較的音域ごとの音色を画一化されやすいプリセットの一音色だけですべてを厳密にリアルに表現しようとするのは難しい。可能であれば複数の音色を用意し、それぞれの奏法・音域ごとに音色を差し替える方法をとると効果的だろう。