【楽器楽語事典】木管楽器・リードなし(Woodwind Non Read)

Piccolo ピッコロ

piccolo〔英・仏・伊〕/ottavino〔伊〕

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Piccolo
ピッコロ。木管楽器群においてもっとも高域を担当する小型のフルート。

イタリア語の「フラウト・ピッコロ(小さいフルート)」を略した形が定着した、通常のフルートより1オクターブ高い音域を持つ木製または金属製の小型のフルート。「ピッコロ・フルート」と呼ばれることもある。オーケストラの木管楽器の中でもっとも高い音域を持つ楽器で、オーケストラにおいて複数のピッコロを用いることは稀で、楽曲中必要に応じて適宜フルートと持ち替えて奏する事が多い。楽器の構造・鍵の機構・奏法・運指は基本的にはすべて通常のフルートと同じである。そのため記譜時には実音より1オクターブ低く記譜される。かわいらしさと固く浸透力に富むその音色はオーケストラだけではなくブラスバンドにおいても重要であり、特に行進曲等に用いられる楽曲編成においてはフルート以上に重要な楽器となることもある。DTMではオクターブ下げることによってフルートの代替音色とすることができる。アタックの鋭い固めのフルート音色が欲しいときにこの手法を用いると重宝するだろう。

Flute フルート

flute〔英・仏〕/flote〔独〕/flauto〔伊〕

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Flute
フルート。木管楽器としてはもっともポピュラーな金属製の横笛のひとつ。

木管楽器の代表的なもののひとつで、横笛の一種。ピッコロに対して「grand flute」「concert flute」などと呼ばれることもある。フルートは木管楽器だが、今日においては金属製のもの(一般には純銀または洋銀で、高級なものには金またはプラチナを用いられるものもある)が主流である。音域は通常3オクターブだが、運指の技巧によりそれ以上の高音を出すことも可能である。フルートは音量が豊かで幅広い表情を持つため、オーケストラではもちろん、独奏や室内楽でも重用されている。ゆるやかで静かな楽句では典雅で澄んだ音色を、早く激しい楽句ではトリルや走句(平たく言えば早弾き)も容易に可能であり、非常に運動性に富んだ楽器と言える。その表情の豊かさは楽曲に対する扱いも比較的容易なため、DTMにおいてメロディーラインにフルート音色が用いられることもしばしばである。DTMではビブラートとともにピッチの設定を考えると有効に機能することが多い。特にストリングスや他の木管楽器とセットで使用する場合、フルートの音量を出しすぎるとヒステリックに聴こえてしまい、またリアルではなくなってしまうため注意が必要である。全体の響きの中でフルートの音が埋もれてしまうような場合は、音量ではなくピッチを少し上げてやると、少ない音量で音が立って聴こえるようになる。また、ビブラートは音色と同様に使用する音源によって大きな差があるため、楽曲に合わせて適宜デプス(かかり具合)を調整するとより美しく響くようになる。通常、フルート属といえばいわゆる通常のフルートとピッコロ、この2種類程度が一般的だが、実は意外なほどその種類は多い。ソプラノフルートやティエルスフルート、更にアルトフルートやバスフルートも存在し、調性が異なるものを含めると種類は更に多くなる。また珍しいものでは更に低域を担当するコントラバスフルート、ダブルコントラバスフルートというものもあるが、これらを目にすることはまずないだろう。尚、リード楽器には「シングルリード(単簧・1枚)クラリネットなど」「ダブルリード(複簧・2枚)オーボエなど」「フリーリード(自由簧)ハーモニカなど」「エアーリード(無簧)」などの種類があるが、フルート属はリードを使わないエアーリード(無簧)楽器である。

Recoder リコーダー

recorder〔英〕flauto diritto,flauto dolce〔伊〕

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Recoder
リコーダー。いわゆる縦笛のことで、学校教育でも用いられるポピュラーな楽器のひとつ。

縦吹きのフルート属の代表的な楽器で、1770年ごろまでは、ただ単にフルートと言った場合はこのリコーダーを指し、横吹きのフルートは「flauto traverso〔伊〕」と呼び両者を厳密に区別していた。リコーダーという名称は、16世紀ごろの古い英語の動詞「to record (to sing like a bird)、楽しそうに歌う」に由来する。リコーダーは管の上端部を加工して、鳥の口ばし状のマウスピースが設けてあり、前面に7つ、背面に1つ指孔がある。最下方の2孔は、今日ではツイン・ホール(2孔)の形になっている。現在では、楽器を持つ際には左手が上方、右手が下方と固定されている。左小指と右親指には対応する指孔がなく、残りの8指で8つの指孔を分担する。大きさも音の低いものから、「バス」「テノール」「アルト」「デスカント(ソプラノ)」「ソプラニーノ」など大小様々なサイズがある。DTMでの使い方としては、リコーダーとして使うのはもちろん、ビブラートを消してパイプオルガンのひとつとしても代用できる。また、ポルタメント(音から音への移行を、途中にある音を経過させながら滑らかに行う奏法)をかけることで、70年代風のアナログシンセをイメージした音作りも可能なので、試してみても面白いだろう。

Pan Flute パン・フルート

pan flute,panpipe(s)〔英〕

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Pan Flute
パン・フルート。柔らかで独特な音色を持った、フルート属の気鳴楽器。

「パンの笛」とも呼ばれる、フルート属の気鳴楽器のひとつ。形状はいわゆるフルートとは異なり、長さの異なる数本から数十本の管(パイプ)を、上端を揃えて長さの長い順にいかだのように並べる、もしくは円環状(丸く束ねる)にして息を吹き込んで鳴らす。各管が縦型のフルートとして機能する。瓶の口を吹く要領で音を鳴らすといえば理解しやすいだろう。管の材質は様々あるが、主に植物の茎や木、粘土や金属などで、管には通常指孔はない。世界各地に古くから存在しており、古代ギリシャのものがパン神(神の名前)に由来すると言われている。音色としてはフルートに似た音質を持ちながらもより柔らかで叙情性を持っており、メロディーラインはもちろん、オケの後ろでメロディーラインの味付けとして使用されることもたびたびある。音色的・構造的な観点から見てもパイプオルガンに似ている部分があり、DTMにおいては簡単なエディットを施すことによりパイプオルガンのバリエーションとして利用できることを憶えておくと便利だろう。DTMでは「パン・フルート」という呼び方がポピュラーだが、一般的には「パン・パイプ」と呼ぶことが多い。

Blown Bottle ブロウン・ボトル

blown bottle〔英〕

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Blown Bottle
瓶の流出口に空気を当て音を出したものを再現した音色。

ブロウン・ボトルの音色は楽器というより音をシミュレートした音色である。Blown Bottle、すなわちビール瓶のような形状の瓶の口の部分に対して、やや並行気味に息を吹きかけると、空気の渦ができそれが瓶の中で共鳴して「ボー」という音が鳴るが、その音色を再現した音色である。当然瓶の大きさや構造によって周波数成分が変わるため、瓶を変えることにより異なった音がする。具体的にどういった使用法が正しいといった類の音色ではないので、音色のバリエーションとして色々利用を試してみると良いだろう。

Shakuhachi 尺八

shakuhachi/bamboo flute〔英〕

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Shakuhachi
<尺八。独特の音色を持つ竹製の管楽器。/dd>

日本の管楽器で竹製の縦笛の一種。日本には奈良時代に中国から伝来した。尺八の名は、長さが一尺八寸(約54.5センチ)だったことに由来する。尺八というと単一のそれを想像することが多いが、実はバリエーションは多い。「雅楽尺八」「一節切(ひとよぎり)」「普化尺八」など様々であるが、現在では一般的には「普化尺八」を挿し、また、尺八は長短種類がある移調楽器である。常用される音域は広く、ほぼ2オクターブ半に及ぶ。雅楽的なイメージが強く、ポップスなどで使用される機会は少ないが、マッチする場合は利用範囲を狭めずリードメロディーとして活用してもよいだろう。適度なディレイを与えることでも良い結果が得られることが多い。DTMにおいてはピッチベンドやビブラートを調整することで「しゃくり上げ」と呼ばれるアタック感や独特の雰囲気を出すことができる。また、調整を施すことによりフルートの代用になる場合もある。

Whistle ホイッスル

whistle〔英〕

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Whistle
口笛。軽快でコミカルな音色。

DTMにおいてこの音色は「口笛」を再現したものであるが、一般的には呼び笛のような小さく簡単な笛の総称である。呼び笛の方のホイッスルは楽器というよりはパーカッションの意味合いが強く(実際に呼び笛はパーカッション楽器のひとつである)、音程を求めることが困難であるが、この項で言うホイッスルは口笛であり、人間の口を用いたものであるため限度はあるものの、ある程度の音域と音程、ピッチを作り出して曲を奏でることができる。この辺りについては取り立てて解説するまでもないであろう。音色としてはまさに口笛のそれで、ブレスの音を含んだ軽快なものである。人間の声より大きな音を出すことはできないため、マイクなどを使って増幅しないと他の楽器と並べて利用することは難しく、不向きとまでは言えないが、合奏にはあまり用いない。DTMでは演奏情報の中でピッチを細かく揺らしたり、ビブラートをつけたりすることでよりエモーショナルなものになる。「メロディーを口ずさむといった」シチュエーションで鼻歌のような形で楽曲内で利用すると効果的だろう。更には人が吹いているという観点からみて、息継ぎ(ブレス)のことまで考慮して制作するとより芸が細かい。これはどの吹奏楽器にも言える。

Ocarina オカリナ

ocarina〔伊〕

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Ocarina
オカリナ。素朴で温かみのある陶土製の楽器。

リコーダーと同じ発音原理を持つ陶土製の鳩笛。1860年頃、イタリア人のドナーティが考案した。「小さなガチョウ」を意味する「オカリーナ」が指すとおり、吹き口が小鳥に似た形状を持っている。またその形状から「スイートポテト」の愛称もあるが、現在では世界各地で様々な形、材質の楽器が存在しており、ゆえに移調楽器である。音域も通常2オクターブに満たない程度のため、DTMでの使用もリアルさを求めるのであればある程度意識した方が良いだろう。素朴で温かみのある音は陶土製のそれで、一概には言えないが早いパッセージの楽句よりも穏やかな伸びのある演奏の方が特徴を良く表すだろう。このオカリナもまた、様々な楽器とのアンサンブルが楽しめるが、主にメロディーラインやオブリガードで利用されることが多く、重奏で用いられる例はそれほど多くない。位置づけとしてはハーモニカと似ていると言えるだろう。多量の楽器と生演奏でのアンサンブルを行うには音量が厳しい場合もあるが、通常であれば問題になることは少ない。ただしソロでの演奏や、小規模の編成でのメロディーを奏することでより魅力が伝わることが多いので、少しリバーブを深めにかけるなどしてオケの編成を最小限にすることでより引き立つだろう。フルートではやや金属質でヒステリックに聴こえるような場合にオカリナを用いると柔らかく適度な厚みを得ることが出来ることも多い。